友人に紹介されて聞きはじめた「カエターノ・ヴェローゾ」。
『ユリイカ』のバックナンバーで本人の特集号が発刊されていることを見つけ、早速取り寄せる。
このことをきっかけに、にわかにブラジル音楽に対する熱が高まってきている。
思い起こせば、ECMレーベルの音源をさかんに蒐集していたころ、ナナ・ヴァスコンセロス、エグベルト・ジスモンチなどを通じてブラジルの音には接していたし、なかんずくジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビン、バーデン・パウエルなどボサノヴァ最強軍団は当然ながら耳にしていた。
しかし、どうして「カエターノ・ヴェローゾ」には辿り着かなかったのだろう。
ポピュラー音楽にくくられるから?
失った時間を取り戻そうと、必死になって彼の音楽を聴いている(必死になって聴く音楽ではないのだけれど)。
先の『ユリイカ』に掲載されているディスコグラフィーを参考にしながら、とりわけ名盤と呼ばれているアルバムから少しずつ集め始めている。
同じ『ユリイカ』の中で、中原仁さんのインタビューにこたえて、ジルベルト・ジルのことを「ぼくの先生のようだ」と評している言葉が目にとまった。ならば、今度はジルベルト・ジルを聴くしかない。
私が最初に手にしたアルバムは『Gil e Jorge(ジルベルト・ジルとジョルジ・ベン)』。最初にこのアルバムに出会えたことは幸運だった。
タイトルが示す通り、二人の共演盤である。両者のボーカルとギターを互いに交差させながら淡々と進行してゆく。そこにはブラジルという土着性とコスモロジー的な浮遊感に満ちあふれた空間が見事に演出されている。
しかしそれは計算されたものではなく、ふたつの稀有な才能の邂逅そのものである。聴く者に緊張感を強いることなく、豊かなミニマリズムが実現されている。